京菓子寸話「寒天」

寒天の画像

「まめかん露」「水ようかん」など、夏菓子の材料に寒天はなくてはならないものです。特に「まめかん露」の寒天の美味しさは逸品。涼しげな透明感をかもし、 やわらかな感触の味わいを活かす夏菓子の生地に寒天は絶妙の働きをいたします。

冬季に昔ながらの伝統的な製法でつくられる寒天、そもそも名前からして涼しげですね。鶴屋吉信では菓子の特性にあわせ、糸寒天、粉寒天などを使い分けてお菓子づくりを行います。

寒天の語が見られるのは江戸中期の百科事典で医師の寺島良安が著した『和漢三才図会』(わかんさんさいずえ)あたりからです。
「石花菜を寒液に煮て戸外へ置くと凝凍して甚だ軽虚なり、俗にこれを寒天と謂う」と書かれています。

テングサ、オニクサ、ヒラクサなど、紅藻類の海草を煮て、その煮汁を凝固させたトコロテンは、すでに奈良時代から食用とされました。和名で「こるもは」または「こごろも」(凝藻)といい、やがてココロブトと訛(なま)って心太の字で表したようです。心太を心天と書き誤ってココロテンからトコロテンとなったといいます。

また寒天の話は十七世紀の後半、黄檗宗(おうばくしゅう)を開いた中国渡来僧の隠元禅師が、そのころ伏見の本陣宿で評判のトコロテン料理を食べて名付けたともいわれます。伏見の本陣宿で食べ残したトコロテン料理を偶然、戸外に放置したところ、寒気に凍りついて乾燥したことが寒天を生み出すきっかけになったといいます。

寒天はタンパク質、脂肪をほとんど含まず、大部分がガラクトースからなる多糖類。細菌に対して強い抵抗力があるので細菌培地など医薬用、工業用によく用いられます。またダイエット・ブームの現代、寒天は便秘によく効く薬効があり、しかも低カロリーの食品として菓子や料理にひっぱりだこです。

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